日本補完代替医療学会誌
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総説
環境とアレルギー:免疫アレルギーの基礎の立場から
出原 賢治
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2006 年 3 巻 2 号 p. 37-42

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抄録

この数十年の間に先進国を中心にアレルギー性鼻炎,気管支喘息,アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患患者全体が飛躍的に増加している.我が国でもこれら 3 つのうちいずれかを持っている方は全人口の 3 割を超え,しかも未だ増加傾向を示しており,大きな社会問題となっている.気管支喘息,アトピー性皮膚炎,アレルギー性鼻炎などのアレルギー疾患は種々のアレルゲンの生体内への侵入によって引き起こされる Th2 型免疫反応を主体とした局所炎症であることが,免疫学の進歩に伴って明らかとなってきた.一方で,アレルギー疾患の発症には多くの遺伝要因や環境要因も関与していることも明らかとなってきた.しかし,近年のアレルギー疾患の増大は遺伝要因では説明できず,何らかの環境要因の変化によるものであると考えられている.また,Th2 型免疫反応が主体であるアレルギー疾患のみならず,Th1 型免疫反応が主体となって引き起こされる I 型糖尿病,多発性硬化症,クローン病といった自己免疫疾患も同じように近年飛躍的に増加していることが知られている.これらの事実を一元的に説明できる免疫学的知識を我々は未だ持ち得ていない.それを説明するための一つの仮説として,衛生状態の改善がアレルギー疾患あるいは自己免疫疾患の増大につながっているとする「衛生仮説」が有力であり,多くの疫学的見地より支持されている.このように環境要因のアレルギー疾患発症への影響の分子的機序が解明されることは,どのような代替医療がアレルギー疾患を改善の方向に向かわせるかを考える上で重要だと思われる.

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© 2006 日本補完代替医療学会
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