抄録
脳虚血では,局所における過剰の活性酸素種の産生によりアポトーシスが誘発される.本研究では,酸化ストレスによる神経障害に対する霊芝菌糸体培養培地抽出物 (WER) の保護効果について,培養細胞およびマウス脳虚血モデルを用いて検討した.
PC12 細胞に H2O2 処理を行い,誘発される細胞死に対する WER の作用を MTT assay および TUNEL 法により評価した.また,マウスに WER (1 g/kg) を単回または 7 日間経口投与した後,低酸素脳虚血処置を行い,神経症状,脳梗塞巣体積およびアポトーシスの評価を行った.
PC12 細胞を用いた実験において,WER は H2O2 処理後の細胞生存率を上昇させ,アポトーシス陽性細胞数を減少させた.WER を 7 日間経口投与したマウス群では,対照群と比較し,虚血後の神経症状の改善が認められ,また脳梗塞巣体積およびアポトーシス陽性細胞数が有意に減少した.これらの結果から,WER は酸化ストレスによるアポトーシスを抑制し,脳虚血障害に対して保護作用を示すことが示唆された.