自閉スペクトラム症などの発達障がいを「疾患」としてではなく「脳機能の多様性」として捉え,治療だけではなく社会的少数者としての「合理的配慮」あるいは「多様な人々にとって過ごしやすい社会の実現」を求める動きは,近年勢いを増している.これに伴い,自閉症などの発達障がいを対象とした基礎研究においても,「障害」や「治療」のみに焦点を当てた研究から,当事者の強み・弱みを価値判断なしに同定し,個人の脳機能の特徴にあった,生活の質を高める方略につながるような研究が求められている.本稿では,脳機能の多様性に関する近年の議論を概観し,発達障がいの基礎・臨床研究への示唆について議論する.