抄録
材料設計,分子設計などの様々な実験において,望んだ物性を持つ材料や分子の探索は困難を極める.従来は実験者の経験や勘を頼りに原料組成や反応条件などのパラメータを網羅的に設定することにより実験が進められてきたが,こうした方法では実験回数が増加してしまい開発にかかるコストは時間的にも費用的にも莫大なものとなる.実験回数を軽減するために実験計画法に関する研究が進められてきた.その1つとして,統計的手法である回帰分析手法を用いて各パラメータ候補に対応する物性予測値を算出することで効率的に探索を行う手法が開発されてきたが,この手法では適切に外挿領域を探索することが困難であった.更にパラメータの数が増えるに従い予測が困難となり,十分な予測精度を持つ領域が限られてしまう.このため本手法では回帰モデルによる予測値に加えて,gaussian processモデルにより算出された予測誤差及びone-class support vector machine (OCSVM)モデルにより算出された既存データの分布密度を踏まえて最適なパラメータ候補の選択を行うことを提案する.これによりモデルの適用範囲を設定することで予測値信頼性の高い外挿領域を適切に探索することができ,様々な系における実験コストの低下を実現できると期待される.シミュレーションデータや水溶解度の物性データを解析したところ,本手法を用いることにより物性予測値のみを指標とした探索と比較して少ない実験回数で目的とする物性値を満たす候補を発見することができ,効率的なパラメータ探索が可能であることが確認された.