2018 年 17 巻 3 号 p. 158-159
The purpose of this study is to clarify the regularity of occupancy hidden in the bi-occupied site by Al or Si of mullite crystal.Many mullite models with different atom arrangement were prepared and their stability was examined after performed structural relaxation calculations.The peak intensities of pair correlation function for metal atoms changed with the composition.From the three-view drawings of oxygen vacancy sites,it is suggested that when the oxygen vacancies aligned on the c axis, the crystal structure becomes unstable.
本研究の目的は,恣意性を排除した方法で大型結晶を再現し,ムライト結晶中の(Al, Si)二重占有サイトの原子配置ならびに酸素サイトの空孔分布についての秩序を明らかにすることである.
ムライト結晶の(Al, Si)二重占有サイトの原子配置ならびに酸素サイトの空孔配置をランダムに設定したモデル構造を作成した(Figure 1).組成は1.58Al2O3―SiO2, 1.75 Al2O3―SiO2,1.95Al2O3―SiO2で各組成500個の候補構造を用意した.それらを構造緩和計算,つまりエネルギー極小化計算を行い検討した.(モデル発生及び計算条件については先報 [1]を参照されたい.)

The mullite calculation model of this study.
構造緩和計算後の生成熱の値はムライトのAl/Si 比に従って変化した.多数作成した候補構造の生成熱の値はいずれの組成でも正規分布の広がりを示した.これはモデル構築に用いた乱数が正しく機能したことを示す.生成熱が低い候補構造を各組成5個ずつ抽出して解析を行った(先報 [1]).
二体相関関数を調べた.酸素原子と金属原子,酸素原子同士の二体相関関数には組成による違いは見られなかった.一方,金属原子間の二体相関関数には組成による変化が見られた.例としてFigure 2 にSi-Si 二体相関関数を示す.Al-Al,Al-Si,Al-Oの二体相関関数は二重占有サイト以外にあるAl との相関も含まれる.

. Pair correlation function (Si-Si) of (a) 1.58Al2O3―SiO2,(b) 1.75Al2O3―SiO2,(c) 1.95Al2O3―SiO2
酸素空孔サイトのみを表示した三面図(Figure 3)を見ると,生成熱の高いモデル(a)では空孔がc軸上に連続して並ぶ箇所が複数見られた.これは生成熱の低いもの(b)には見られなかった.この傾向は他の組成でも同様に見られた.このことから,c 軸に空孔が並ばない配置の方がより安定であることが示唆された.

. The three-view drawings of oxygen vacancy positions of 1.58Al2O3-SiO2 model that have higher heat of formation (a), and lower heat of formation (b).
今後は二体相関関数の結果,特に配位数と原子の最近接距離に注目して配置の秩序を検討が必要である.また,算出したX 線回折パターンと実測値を比較し,2重占有サイトにおける占有秩序の抽出を試みる予定である.