Journal of Computer Chemistry, Japan
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巻頭言
「秋の巡業」を終えての雑感
神部 順子
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2018 年 17 巻 4 号 p. A17

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科学コミュニケーション室の恒例行事となっている「秋の巡業」,2018年11月3日秋季年会での一般公開イベント,および11月9日~10日のサイエンスアゴラ2018は無事に終了した.何より参加くださった多くの方々にひたすら頭が下がる.特に,一般公開でブース発表してくれた青森市立古川中学校の生徒さんや保護者の中には,当日早朝に出発した方だけでなく,弘前に前泊された方もいらっしゃると聞いた.同校の協力に改めて感謝を申し上げたい.

さて,サイエンスアゴラ2018での日本コンピュータ化学会のブースについては,2011年より本学の学生達が来場者対応のお手伝いをさせていただいている.日頃,情報関連科目を学んではいるが,こういったイベントに参加する機会はほとんどない学生達にとって,ある意味ではハードルの高いイベント参加になっているのも事実である.後ほど回収した学生の主な感想は以下の通りである.

〇私(学生自身)よりも,参加している小学生たちのサイエンスに純粋に興味を持っている様子,サイエンスに関する知識を持っていることに驚き,同時に感心した.

〇小さい子から大人までたくさんの人に多面体の作り方を教えた.上手く説明できたのか自信はないが,お客さんが無事に多面体を完成させた時には,私も嬉しくなった.

〇図形の英語での呼び方を教えてもらったこと,その話題でお客さんともお話しすることができてよかった.

〇数字でこんなに楽しめるものなのだと,改めて知ることができ,とても楽しかった.

〇先生方のお話を聴くことは,学問の世界や社会の仕組みの内容で,これまでにない新鮮さや学びがあった.

〇サイエンスアゴラに参加したことで,こんなことを研究している人がいるのか,と思う内容がいくつもあった.

さらに今後,この学生達は,12月に今年で5回目となる地元の小学校での出前講座をやらせて頂く.こういったイベントでの経験を通し,科学的見方・考え方のできる学生を育てることを目指す.そこにあって,今後学生と共有したいことは「自分が対応する相手はいつも科学に興味がある人ばかりではないことを踏まえ,興味がない人にも楽しめる,かつ充実した内容となるにはどうするべきか」である.提供したい内容について学生自身が具体的なイメージがシャープに描けること,さらには,いろいろな専門家と会えるイベントの強みを活かすことができるかにかかっているとも言えるだろう.大学教育として求められている“答えのない問題”に最善解を導くことができる問題解決力を身に付けた学生の育成という研究テーマとして進展させている.また,生活に関わりのある身の周りのすべての事象,例えば私たちの暮らし,ICTの発展と職業,ごみ問題,自然災害,エネルギー問題,健康問題,果ては宇宙に関することにも,学生が具体的な構想を組み立てるためにも尽力することとしたい.

今年の秋の巡業は,2週続けて週末に科学イベント出張モードとなった.こんなタイトなスケジュールはそうはあってほしくないものではあるが,その分,これまでにない収穫,つまり,展示する側同志の情報交換や交流が大いにあったと感じている.ご参加くださっている皆様への心から感謝を述べると同時に,今後,さらに学会員のご協力をお願いしたい次第である.

 
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