Journal of Computer Chemistry, Japan
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研究論文
スペクトルによる周期構造に基づいた原核生物と真核生物の比較ゲノム解析
福島 敦史池村 淑道金谷 重彦
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2003 年 2 巻 3 号 p. 95-110

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抄録
本研究は、パワースペクトル解析と周期性に寄与している塩基配列を同定する周期配列分布パラメータFkによって、原核生物をはじめ線虫、シロイヌナズナ、ショウジョウバエ、マダラカ、ヒトの周期性の特徴づけを行った。線虫ゲノムにおいて、染色体Iで68-bp (base pairs)、染色体II では 59-bp、染色体IIIでは94-bpの新たなリピート配列が見つかった。これらのリピートはいずれも染色体中央部に位置しており、線虫ゲノムにおけるセントロメア機能との関連が示唆される。シロイヌナズナでは、3番染色体に3つの周期(248 bp, 167 bp, 126 bp)、4番染色体に3つの周期(174 bp, 88 bp, 59 bp)、5番染色体に4つの周期(356 bp, 174 bp, 88 bp, 59 bp)が見出された。これらの周期は、Gly-richなORFと関係があった。ヒト21番・22番染色体では、ゲノムの全域にわたって84-bpと167-bpの周期性が見出された。167-bpの周期性に関しては、ヌクレオソーム構造を形成する際に、DNA鎖がヒストンのまわりで完全に2回転するサイズと一致していることは興味深い。長周期についての解析から、特に、ショウジョウバエ、マダラカにおいて、明らかな周期範囲でスペクトルが平坦化することがわかった。他のゲノムでは見られないこの性質は、ゲノムの起源とその進化についての理解への重要な助けとなるに違いない。
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© 2003 日本コンピュータ化学会
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