Journal of Computer Chemistry, Japan
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巻頭言
日本コンピュータ化学会創設20周年記念によせて
細矢 治夫
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2021 年 20 巻 2 号 p. A11

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2002年1月1日に化学ソフトウエア学会 (CSSJ) と日本プログラム交換機構 (JCPE) が合体して日本コンピュータ化学会 (SCCJ) が創設されたので,本学会は2022年に満20年を迎える.本来ならば会員一同が参集して記念行事を開きたいところであるが,予断を許さないコロナ禍の昨今そのような計画をきちんと立てられないために,少なくとも「日本コンピュータ化学会誌 (JCCJ)」の20周年記念号でこのランドマークを祝うことになった.会員諸氏の御理解をいただきたい.

本学会の母体となった二つの学会のルーツをさらに遡れば,SCCJ の方は1982年創設の化学PC研究会 (下沢隆会長) が10年後に CSSJ に成長したもので,JCPE の方は 1989年に大澤映二氏の会長の下に作られたものである.この二つの実質的な裏方というよりは原動力となったのが,吉村忠与志と田辺和俊の両氏である.このような歴史的な経緯から,理論化学のがちがちの研究者集団よりは,幅の広い科学教育や産業界の研究者,更にはシニア科学者群が本学会を支えて来た.

従って,従来の手法に頼って時代の最先端を追求するというよりは,化学・物理の諸現象の分子レベル的なhow よりもwhyを追求するスタンスの萌芽的な研究が多く発表されるという本学会の特色ができ上がって来たのである.最近はAI関連の基礎研究も目立って来ている.

更に本学会の自慢は,数百名という小さな所帯でありながら,毎年春秋2回の年会の開催と国内外に開かれたJCCJ と JCCJIE という二つの学術雑誌の定期的刊行だけでなく,中高生や一般の人向けの啓発活動をいくつも続けていることである.これらの実質的な活動を支えている複数の女性を中心としたスタッフの存在を無視することはできない.もちろん,その総指揮は長嶋雲兵と後藤仁志という代々の事務局長である.そして,全国各地で地道に活動していた何人もの研究者がこの2人に睨まれて地方大会の実行委員長を務めさせられたのだが,結果的に彼等がそれぞれの学術機関や行政からより高い評価を得るようになったというハッピーな状況がいくつも生まれている.

このような本学会の絶えまぬ努力にも関わらず,科学・技術の重要性を正当に評価しない行政・学校・企業の目に見えない現代の大きなうねりは,会員数の減少傾向という厳しいかたちで本学会を飲み込もうとしている.それに対して即座に対処できないことに本会長の忸怩たる思いがあるのだが,老若の会員諸氏も共に力を合わせて,今後も本学会の諸活動を一層盛り上げて行こうということをここに宣言する.

 
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