Journal of Computer Chemistry, Japan
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Contribution in Memoriam
The tremendous contribution of Winmostar developerNorio Senda
Yoshio HONMA
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2022 Volume 21 Issue 3 Pages A22-A23

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Abstract

国内外で多くの方に利用されている原子・分子構造モデリング・可視化ソフトウェアWinmostar原作者の千田範夫さんが2021年に逝去された.独学でプログラミングを習得し,Winmostarを公開された業績は極めて大きなものがある.また全国各地で開催された公開イベントに出展され,分子の魅力を幅広くアピールし続けた一部を紹介したい.

Translated Abstract

Norio Senda, the original creator of Winmostar, a molecular modeling and visualization software program used by many people in Japan and abroad, passed away in 2021. He was a self-taught programmer, and his releasing of Winmostar to the public was an extremely significant achievement. He also exhibited at public events held in various parts of Japan, and we would like to introduce some of the ways in which he continued to promote the appeal of molecules in various of fields.

パソコン(PC)が登場して科学研究に使えるかどうか定かでなかった黎明期から,本学会の前々身および前身の1つである化学PC研究会(1982∼1992)・化学ソフトウェア学会(1992∼1996)という場で多くの研究者がその可能性について情報交換がなされてきた.2005年に逝去され,本学会の吉田賞として名を残している吉田弘さんもそのお一人で,学生時代から分子構造データ作成プログラムMOLDAの開発・改変に取り組んで来られた.

残念ながら2021年に亡くなられたWinmostar [1]原作者(現在は株式会社クロスアビリティが開発継続 [2])である千田範夫さんは,本学会発足の前年である2001年からWinmostarの公開を開始された.出光興産在籍時(2007年まで)からアフターファイブに独学でプログラミングを始められたもので,2005年にはIPAの天才プログラマー/スーパークリエータとして認定され,2011年度の本学会功労賞を受賞している [3].

Winmostarは無償版・学生版もあるため学生にも利用され,Twitterでも利用者の投稿を見ることができる.また化学サイトChem-StationにもWinmostar紹介記事が載っている [4].

さらにPC,タブレット,スマートフォンとメディアを選ばないクラウド版 [5](Figure 1)があり,そこには筆者サイト [6]で公開している分子データから約800件を参照できるようにしていただいた.その際,Winmostarでは表示不要としていた多重結合を表示できるように改変してもらい(MDL MOL形式ほかのデータ),高校化学の教材ツールとしての活用も可能となっている.

Photo 1.

 A booth exhibition at the open-house event "Science Dispatch!! Hakodate" at the 2015 Fall Meeting of the Society of Computer Chemistry [7], Japan. Norio Senda (right) and Teruo Nagao.

Figure 1.

 A display example of Winmostar Cloud version (Bisphenol A) [5].

化学PC研究会時代から各地での年会の際に吉田弘さんや千田さんなど分子表示に取り組む方々と酒を飲みながらいろいろ談義できたのは得難い体験であった.また学会秋季年会の際に催された公開イベント [7](Photo 1)やサイエンスアゴラ出展には毎回参加して"分子の見える化"のアピールに協力していただくことができ,感謝に堪えない.特にサイエンスアゴラについては2011年からの学会としての出展以前の2007年 [8]からボランティアメンバーとして参画いただけたのは心強い限りであった.なお,同2007年アゴラに参加いただいた長尾輝夫さんは上掲MOLDAの分子ファイル形式(.mld)による分子構造座標データ集を公開しており [9],それもWinmostarで読み込み可能である.

酒を愛した千田さんとは公開イベント等の打上げで楽しく語り合えたほか,2人でZoom飲み会(その後多人数でも)を開くなど思い出が尽きない.もう千田さんとは酒を酌み交わすことができないとは信じられない思いでいる.WinmostarはWikipediaほか分子情報ページでよく用いられているSMILES記法でも分子組立てが可能であることから,筆者はニュースなどに登場する新規分子データ作成の際にWinmostarを活用させてもらっている.その度に千田さんのことを思い出すのである.

参考文献およびWebページ
 
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