Journal of Computer Chemistry, Japan
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巻頭言
「フラグメント分子軌道法に基づく量子化学計算の最前線」 特集にあたって
福澤 薫
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2024 年 23 巻 4 号 p. A19

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私たちは科学技術の発展のために日々研究を行っています.各専門分野における基礎研究が重要であることはもちろんですが,近年では多分野融合型の連携研究がさかんに行われるようになっており,計算科学の役割も多様化しています.それらの融合研究において,実験的には知ることのできない部分を埋めることができるのが計算科学であり,分子シミュレーションでは,分子が織り成す現象を微視的にとらえ,その分子挙動を精密に可視化することができますし,また多種多様なデータに基づいてインフォマティクス技術を駆使し,機械学習・AI活用することで,新たな知見を創出することができます.そのため,計算科学の重要性は日増しに大きくなるばかりで,私の所属する薬学分野においても「AI創薬」という言葉が日常的に聞かれるようになってきました.

日本発の理論手法であるフラグメント分子軌道 (Fragment Molecular Orbital; FMO) 法は,1999年に北浦和夫博士によって提案されて以来,四半世紀が経過し,ナノ・バイオ分子系の大規模量子化学計算手法として発展の一途を辿っています.FMO法は,巨大分子のフラグメント化という分割処理によって,並列化効率に優れ,数千~数万原子系の全電子計算が可能であるばかりでなく,フラグメント間の相互作用エネルギーという特徴的な定量値を併せ持っています.エネルギーの詳細解析によって分子の機能解明や活性値の理論予測が可能となり,またデータサイエンスへの展開が拓けます.本特集号では,FMO研究に携わっておられる先生方に,最新の計算プログラムの整備状況や創薬分野・材料分野での応用展開,さらには研究コミュニティとしての活動に関する最新論文をご寄稿いただきました.FMO研究に関する最先端の研究成果を集約・共有することによって,量子化学計算の新時代について考える機会としたいと思います.

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