抄録
コンピュータを用いて赤外スペクトルから化学構造を推定するには、データベースを利用する帰納的方法、知識ベースを利用する経験的方法、計算化学を利用する理論的方法、など様々な方法がある。赤外スペクトルからの構造推定能力の向上をめざして、コンピュータを用いて化学構造を推定するこれら様々な手法を総合的に検討した。まず、赤外スペクトルデータベースを利用する帰納的方法を検討し、問題点を考察した。次に、線形学習機械やニューラルネットワークを用いて、赤外スペクトルから官能基の有無を推定する経験的手法を検討し、問題点を考察した。さらに、計算化学を利用する理論的方法の能力を検証するために、非経験的分子軌道法により赤外スペクトルの振動数と強度を計算し、実測値をどの程度再現できるかを検討した。しかし、どの方法を用いても、現状のコンピュータの能力では赤外スペクトルから構造を推定するには多くの問題があることが分かった。