抄録
チオフェン系アゾ色素は対応する置換アゾベンゼンより長波長側に吸収を示す。この現象(深色性)を明らかにする目的でベンゼン、チオフェン、フラン、ピロール、シクロペンタジエンおよびこれらのアザ置換体からなるアゾ化合物について量子化学計算をおこなった。まず、AM1、PM3、DFT計算によりそれぞれの安定配座を推定した。ついでチオフェン系アゾ化合物について硫黄原子の3d-AOを含めた場合と含めない場合のCNDO/S計算を行い、最長波長吸収帯に対する3d-AOの寄与は無視し得ることが確認された。さらに、CNDO/S法およびTD-DFT法によりスペクトル計算をおこなった。その結果、チオフェン系アゾ化合物が特異的に深色性を示すのではなく五員環系アゾ色素に共通した特性であることが示唆された。