2007 年 6 巻 5 号 p. 253-262
ブラウン動力学(Brownian Dynamics;BD)法は溶媒を明示的に扱わないため計算を高速化することができる。従来のBD法は水環境でのタンパク質シミュレーションを対象にしていたため、膜タンパク質には適用できなかった。本研究では膜環境をも非明示的に再現することによってBD法を膜タンパク質のシミュレーションに適用できるように拡張した。αヘリックス構造のポリアラニンペプチドやパピロマーウイルス由来のE5タンパク質、蜂毒のメリチンをモデルとしてシミュレーションした結果、疎水性であるポリアラニンとE5膜タンパク質は膜中で安定に存在した。また、両親媒性であるメリチンペプチドは膜表面に安定に結合していた。これらの結果から、本膜モデルを用いたBD法は膜タンパク質のシミュレーションに有効であると考えられる。