論文ID: 2022-0031
メタノール4分子の環状クラスター(CH3OH)4のOH基とCを同一面内に配置した初期構造から構造最適化計算を行った.HF/STO-3Gでは,初期構造のO-O間距離が2.7 Å以上の場合に最安定構造が高い頻度で得られる.O-O間距離が短い場合には他の安定な配座異性体が2種類得られる.この約2.7 Åの距離はOH基の水素結合力の範囲を示唆する.HF/6-31G (d)では,虚振動を持つ平面構造で収束する.B3LYP/6-31G (d)では,メチル基が環面外の同じ側に向いた構造で収束する.これらの結果は,酸素の非共有電子対の軌道の広がりによる安定化とメチル基の反発力の均衡から説明でき,配座異性体同士の変換傾向を反映する.計算過程で力定数を計算(calcall)すると初期O-O間距離に関わらず最安定構造が得られる.