2022 年 10 巻 p. 36-44
救急医療に勤務する看護師の認知症高齢患者に対する倫理的問題と特徴を明らかにするために,全国の救急指定病院289カ所で救急医療に勤務する経験2年目以上の看護師を対象に無記名自記式質問紙調査を行い,240人の回答を得た。認知症高齢患者の受け入れは,必ず受け入れるが154名だった。認知症高齢患者の対応については,しばしば困難を感じるが142名,時々困難を感じるが63名であった。このことから救急医療では全体の90%以上の病院で認知症高齢患者を受け入れているが,約96%の看護師は,認知症高齢患者の判断能力の低下に伴う意思決定の難しさを感じていた。「看護者の倫理綱領」に沿って事例を分析した結果,「尊厳及び権利」「自己決定の権利」「安全の確保」の3つの条項から,具体的には身体拘束,医療従事者の態度,意思決定支援に対する倫理的問題が明らかとなり,これらの内容を基盤とした対応マニュアルの作成が必要になると考えられた。