臨床倫理
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原著論文
  • ―医療ソーシャルワーカーを対象としたアンケート調査から―
    肥田 あゆみ, 井藤 佳恵
    2025 年13 巻 p. 5-20
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/10/01
    ジャーナル フリー

     【目的】認知症患者の支援における倫理的問題につき法的視点を含めて検討する。

     【方法】日本医療ソーシャルワーカー協会所属の医療ソーシャルワーカー(MSW)1,588名を対象に,認知症患者の意思の尊重に関する意識,医療同意権に関する認識,人工的水分・栄養補給療法(AHN)の選択の実態などについてアンケート調査を行った。

     【結果・考察】回答率は16.6%。MSWは医療同意権の一身専属性に関して理解が高い傾向があったが,過半数のMSWが家族などの「キーパーソン」に患者の医療決定の代諾権があると考えていた。多くのMSWが患者の意思を尊重する姿勢を示していたが,家族の意向や転院調整などの理由により,患者の推定意思に反して胃ろうや中心静脈栄養を選択せざるを得ない場合があることが明らかになった。現実的な制約や家族を重んじる文化的背景との調和を図りつつ,ACPの普及と患者の意思を尊重できる医療体制の整備が課題である。

実践・事例報告
  • 大浦 裕之, 宮田 剛
    2025 年13 巻 p. 21-30
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/10/01
    ジャーナル フリー

     医療従事者による罵声,過度の叱責などのパワーハラスメント(パワハラ)は人権侵害であるうえに,医療事故や看護職不足等医療安全上の重大な脅威となることが知られている。しかし,改正労働施策総合推進法により全事業体にパワハラ防止措置が義務化された現在もなお,本邦の医療機関におけるパワハラ防止対策は不十分なままである。当院では,2020年6月より同法を参考としたパワハラ防止対策活動として,トップの姿勢周知/相談窓口整備/教育研修/ガイドライン策定/行動規範策定/アンガーマネジメント普及活動/挨拶推進運動等を包括的に実施した。翌年7月に同活動のパワハラ抑止効果に関する意識調査アンケートを実施し,その実効性を評価した。その結果,同活動は「効果的,やや効果的」の肯定的回答比率が全体で約64%であり,「無効」の否定的回答比率は全体で約3%であった。この結果から同活動はパワハラ抑止に関し,ある程度効果的である可能性が示唆された。

  • ~終末期患者と家族の全人的脆弱性に配慮したケアの重要性を巡って
    中村 健児
    2025 年13 巻 p. 31-36
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/10/01
    ジャーナル フリー

     終末期転移性肝腫瘍患者が重症低血糖症を併発し,意識レベル維持のために高カロリー輸液が必要となったが,患者が血糖補正中止を求め,倫理問題を考察する必要が生じ,倫理分析を行った。その結果,このような患者の治療中止要請に公平・公正(正義)をもって応答するためには,周囲の状況の厳密な評価とそれへの対応が必須であると考えるに至った。とくに,患者の身体・心理的苦痛の解決だけでなく,顕在的な患者の意向と拮抗する潜在的な心理社会的(実存的)問題(とくに,家族を含めた周囲の人達の意思と,彼らとの関係性)をも明らかにし,それを多職種専門職チームアプローチによって特定・分析・解決するために最善を尽くすことが必要である。なぜなら,真の患者(時には家族)の意向を知って自律性を尊重し,医療の恩恵享受の公平性(正義)を保つためには,終末期患者(時には家族)の全人的(身体・心理社会・実存的)脆弱性への配慮が必須だからである。

  • 澤田 美和, 明石 惠子, 若山 朋代, 丸谷 幸子
    2025 年13 巻 p. 37-46
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/10/01
    ジャーナル フリー

     臨床倫理事例検討会を行う際に臨床倫理の4分割表は情報整理に役立つ。しかし,そこから倫理的問題への対応を導く論理,すなわち倫理的推論や,具体的な対応策が導き出されるわけではない。このため本研究は,地域で開催された多職種による臨床倫理事例検討会での議論内容を基に,倫理的推論の視点を明らかにすることとした。研究デザインは質的記述的研究,調査期間は2022年2~12月であった。研究参加者は3回の事例検討会に参加し,本研究への参加に同意したのべ37名の医療従事者であった。各事例検討会の議論内容の録音データから逐語録を作成し,倫理的推論に該当する箇所を抽出してコードとし,類似性に基づいてカテゴリ化した。多職種臨床倫理事例検討会における倫理的推論の視点は,治療選択における不確実性の認識,治療に伴う苦痛への危惧,丁寧な共同意思決定プロセスの模索であった。

資料論文
  • 野口 善令, 松村 優子, 三浦 由佳里, 板井 孝一郎, 竹下 啓, 恋水 諄源
    2025 年13 巻 p. 47-63
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/10/01
    ジャーナル フリー

     日本臨床倫理学会版「倫理コンサルテーションの手引き」作成の予備調査として,上級臨床倫理認定士コース参加者を対象に倫理コンサルテーション活動の困難についてアンケート調査を実施した。回答率は88%であった。5つの領域の困難の質問に対して開始,到達の困難を感じる者が53%,37%であり,質,維持,フィードバックの困難については18%,18%,11%であった。困難ありの回答者のなかでは,業務負担への不安,臨床倫理的スキルの自信のなさ,教育の機会不足,倫理的分析の質の自信のなさ,業務の個人的負担,現場とのコンセンサスの難しさが目立ち,困難性にはある程度共通性があると推測された。また,自由記載の回答から,上層部の理解,人材リクルート,フィードバックの方法,現場の求めるものとの乖離など,15のカテゴリーが抽出された。具体的な解決策の回答は少なく「手引き」作成には具体的な解決策を盛り込む手順が必要と考えられた。

  • 大貫 優子, 鈴木 みづほ, 運﨑 愛, 森 朋有, 竹下 啓
    2025 年13 巻 p. 64-77
    発行日: 2025/03/31
    公開日: 2025/10/01
    ジャーナル フリー

     神経筋疾患の多くは難病であり,進行性で治癒不可能である。患者の意思をどう尊重し,最善の利益を推しはかるのか,医療・ケア提供者は日々難しい課題に直面している。そこで,神経難病患者の意思決定支援に必要なことを明らかにし,よりよい支援体制構築の基礎資料とすることを目的として文献の検討を行った。1999~2023年の間に医学中央雑誌webに掲載された文献から,「神経筋疾患」「意思決定」のキーワードを用い検索した。このうち47件の文献から「意思決定支援に必要なこと」についての記述部分を抽出し,内容の類似性に沿ってカテゴリー化した。【適切なタイミングでの正確な情報の伝達】【患者の自律性を尊重するコミュニケーション】【意思表出の支援】【医療者支援】【途切れのない支援】【介護者支援】【療養支援体制の整備】と分類された。早い段階で正確な情報を伝え,多職種チーム全体で継続的に支援する必要性が示唆された。

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