治療の起点となる診断という医行為については,患者が実質的診断主体を知ることが困難な構造的問題があり,倫理的検討がいまだ不十分である。医師法は,医師でなければ医行為を業として行ってはならないと規定しており,その該当性は形式ではなく実質的内容に基づいて判断される。しかし,患者と直接接触することのない病理診断領域においては,非医師である歯科医師が報告書の「下書き」や「コンサルテーション」などの形式を用いて,医科領域の病理学的判断に実質的に関与する事例が継続的にみられる。こうした行為は,法倫理の観点から幾つかの問題点を有している。本稿では,病理診断の制度的位置づけの歴史的経緯,病理専門学会の対応,他科領域の制度的対応との比較を通じて,現行制度の曖昧性を検討する。さらに,専門職の職域分化だけでなく,患者への説明責任という観点から,病理診断における実質的診断主体の制度的明確化と倫理的再定位の必要性を提言する。