抄録
人が発声するとき、肺からの呼気、声帯振動、声道の動作が時間的に同期することで正常な発声がなされるが、高齢者ではそれらの時間的同期がとれない発声器官の非同期現象が観察された。本論文では、発声器官の非同期現象と年齢との関係について語頭の有声音に限定して述べる。発声器官の非同期現象を二つに分け、肺からの呼気に対して声帯振動が遅れる非同期現象については、語頭母音の前に喉頭摩擦音らしき音が付加される割合と年齢との関係、喉頭原音と声道の動作の非同期現象については、有声子音の前にみられるバズの長さについて高齢者と非高齢者での検討を行った。その結果、それぞれの非同期現象について年齢との関係性が示された。