2017 年 33 巻 2 号 p. 180-186
Fontan関連肝疾患(FALD)の病態は不明な点が多く,高い中心静脈圧に起因するうっ血肝等により肝組織障害が発現すると考えられている.症例は13歳男児.Ebstein奇形,心室中隔欠損のため2歳時にFontan手術施行.4歳時蛋白漏出性胃腸症(PLE)発症.8歳時門脈体循環シャント(PSS)指摘.11歳時PLE再発.13歳8ヶ月時PLE再々発.経過中直接ビリルビン上昇が徐々に増悪し,13歳10ヶ月で永眠.肝組織で毛細胆管内の胆汁うっ滞,中心静脈・類洞拡大,肝細胞融解性壊死等を認め,循環不全に伴うショック肝と判断した.肝線維化は軽度であり類洞などへの血栓形成は認めなかった.PSSに伴う門脈血流減少に加え,心不全進行による中心静脈圧上昇があり,繰り返し肝細胞への虚血を生じた結果ショック肝に至ったと推察した.本症例もFALDの一病態と考えられる.今後の症例の積み重ねが大切である.