抄録
鳥類は発達した遠心性の視覚投射経路を持っており,これを向網膜系と呼ぶ.向網膜系の2次ニューロンであるIOニューロンは中脳狭部に集中しており,向網膜神経核(ION)を形成している.このIONを限局的に不活性化することで,他の神経経路への影響を抑えつつ向網膜系の機能を停止させることが可能となる.本研究では,IONにGABA作動薬であるムシモールを微量注入することで向網膜系の機能を可逆的に停止させ,視覚探索にどのような影響があるか検証した.ムシモールによる向網膜ニューロンの不活性化によって妨害刺激存在下での標的刺激選択の精度の低下が観察され,向網膜系が選択的注意を実現する神経システムであることが強く示唆された.