抄録
カクテルパーティー効果として知られている人間の聴覚が持つ能力の一部で,人は雑音環境下においても目的とする音源のみを選択的に聴取することが可能である。この両耳聴の機能の一部をモデル化したものの一つである周波数領域両耳聴モデルは,音源方向推定とそれに基づく音源信号強調を行うことができる。しかし,複数音源が存在する際に方向の誤推定が生じる。そこで誤推定を減らすために,人が音源方向を向くという身体動作の情報が役立つと考えられる。本稿では,小型多機能センサを用いて会話中の聴取者の頭部運動を検出し,その情報を周波数領域両耳聴モデルによる音源方向推定に付与することにより改善を試みる。