大日本窯業協會雑誌
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電球用硝子の風化に就て
高橋 三五郎
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1924 年 32 巻 373 号 p. 1-5

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抄録
前記各種の實驗結果及び自然風化に於ける概要を述ぶれば次の如し。
(イ) オートクレーブ試驗法は高厭温度の熱水或は蒸氣中にて使用する硝子の侵蝕或は蝋粉作用に依る耐力を計るに適せり、 而して其結果は必ずしも自然風化と一致せず。
(ロ) 溶出アルカリ定量は水或は酸に對する硝子の耐力を測定するに最も適當なり。 然るに自然風化の最も困難とせる硝子の曇り或は班點の程度は單に溶出アルカリ量のみにては測知すること能はず。
(ハ)、 加熱處理法は特に硝子の軟化點附近の失透に對する耐力を測るに必要なり、 此場合に於ける失透の結晶は自然風化に於ける結晶と關係ある如く思はるゝも其の成因は前者は六〇〇度以上の濕氣少なき場合に生じ後者は五〇度以下の濕氣多き場合に生じ易く且つ其の結晶は五〇〇度に熱する時前者は不變形にして後者は變形消滅せり。
(ニ)、 風化試驗温濕裝置は貯藏中に於ける各類硝子の風化耐力を測り且つ柝出物の形状及性質を比較試驗するに最も適せり、 此方法は風化耐力を數字的に表はすこと困難なるも短日間に自然風化と同樣の析出物を生ずるを以て顯微鏡試驗を行ふに甚だ便利なり。
(ホ)、 之を綜合すれぼ (イ)、 (ロ)、 及び (ハ) の方法はそれぞれ特種の状態に於ける硝子の耐力を測るに適用さるゝも之を自然風化の場合に應用するは幾多の困難あり、 然るに (ニ) の温濕裝置にありては能く之に適合し且つ電球用硝子の風化防止に關しその最も困難とせる曇り又は斑點の形状、 性質及成因を研究するに特に必要なり、 尚は本裝置は一層迅速にして且つ完全なるものに改良したき考なり。
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© The Ceramic Society of Japan
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