抄録
1. 本研究の豫備實驗として1-13種の長石質陶器素地を以て圓板を成形し, 之を1200℃迄締燒し, 之に1-3種の釉を施して1100℃で釉燒を行ひ, 釉燒時間, 釉の厚さ, 成形壓, 釉の粘度及素地の組成と反曲との關係を求め且釉に因る素地の膨脹を測定した。
2. 試驗體は多くは唯1個づつであるから結論を下すことはできないが, 實驗結果は次の通りである。 (1) 釉燒時間の長いとき, 釉の厚いとき, 成形壓の低いとき並に流動性の釉を用ゐたときには反曲が著しかつた。 (2) 素地原料中蛙目, 大峠白士, 蝋石は反曲を小ならしめ, カオリン, 珪石, 長石は反曲を大ならしむる傾向を示した。 (3) 釉は素地の長さを増した。 (4) 1100℃の釉燒時間が2時間に達した場合にはコパルトで着色した釉が可なり深く素地中に滲入した。本實驗の結果だけで見ると反曲は釉の滲入に因ても起り得るやうである。
終りに著者等は本實驗中財團法人旭化學工業奬勵會から研究費の補助を受けた。又佐治タイル合資會社の社長並に五十鈴隆吉, 館野三九馬兩氏は有益な資料と助言とを與へられた。茲に是等法人及3氏に對して衷心の感謝を捧げる次第である。