大日本窯業協會雑誌
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鱗珪石煉瓦の試作に就て (第6報)
製造研究其の四
高良 義郎池ノ上 典
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1943 年 51 巻 604 号 p. 189-197

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抄録

石英片岩質の本宿珪石及びチヤート質の津奈木珪石を主原料として前報 (第5報) 迄に行つて來た實驗結果より考察するにそれ等の試驗煉瓦の最も著しい缺點は白系珪石特有の燒成による龜裂破損の多い點であり之を防止する爲並に轉移助長の意味て鱗珪石を比較的多く含む煉瓦の粉碎物を配合中に小量混入すれば強度低下し氣孔率大に過ぎざる傾向がある. 故に本報に於ては之等の缺點補正の目的にて鐵分を補給する爲に鋼滓及び含鐵珪石を添加した場合の試驗を行つた. 其の結果,
(1) 鐵分の添加は燒成歩留りを良くし熔融現象を良好ならしめる效果がある.
(2) 鐵分の添加により從來の缺點たる耐壓強度は増大され氣孔率も可成り少なくする事が出來たが耐火度は稍々弱くなつた. 比重は可成りよく低下を示した.
(3) 總ての場合礦化劑としての鹽化アンモンの作用は鱗珪石の生成状態の項にも述べた通り寧ろ鱗珪石化よりも方珪石化に有效なるが如き結果を示し又前述の通り作業頗る困難なる爲め今後之が使用を中止し專ら蓚酸ソーダのみを用ひる事とした.
(4) 本宿珪石は粉碎に際して微粉を生じ易く成型容易にして煉瓦の強度大なるも氣孔率大きく且つ津奈木珪石使用の煉瓦に比較して轉移稍容易ならざる傾向がある. 即ち本宿珪石を使用したものは石英の殘存多く燒成温度, 燒成時間其の他につき一層の研究を要するものと認められる.
(5) 以上の諸結果より綜合して今後の研究は礦化劑としては蓚酸ソーダ, 原料としては津奈木珪石を用ひて續行することとした.

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© The Ceramic Society of Japan
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