大日本窯業協會雑誌
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β-アルミナに關する研究 (第9報)
囘轉窯により低温燒結されたバイヤーアルミナ中のβ・Al2O3の存在に就て
加藤 左織山内 俊吉
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1944 年 52 巻 617 号 p. 194-196

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抄録
(1) 本報では少量のNa2Oを含むバイヤーアルミナを比較的低温度で燒結した場合果してβ-Al2O3を形成するか否かを檢討した. 本試驗は工業上種々の有害な作用を及ぼすNa2OをAl2O3より除去する方法の研究に對しても極めて有用である.
(2) 試料として本邦某社製のアルミナ粉末を用ひた. 此物はバイヤーアルミナを囘轉窯により1300℃附近に燒成したものでAl2O398.34%, Na2O 0.87%を含み工業用及化學用普通品としても一般に用ひられる純度のものである. しかし比重 屈折率等の値が嚴密にα・Al2O3よりやゝ低い値を示す黙よりβ-Al2O3の生成が豫想せられる.
(3) β-Al2O3の比重は約3.26であつてα-Al2O3の3.9-4.0に比し著しい差異がある所より試料を比重3.34の沃度メチレンを用ひて遠心分離した.
(4) 其結果3.34より比重輕き部分は約19%の割合に存在し其物の化學成分, 比重等の値は前の研磨材中のβ晶と極めて相類似し且つ鏡檢又はX線分析によりても明確にβ-Al2O3である事が知られた. 測定値の大樣を記せばAl4O3/Na2O分子比は12.35, 比重3.27, 屈折率1.662である.
(5) 以上の實驗によりバイヤー法に於て三水和アルミナの沈澱時に伴はれる少量のNa2Oは比較的低温度の燒成により已にAl2O3に極めて強固に結合してβ-Al2O3を形成しその除去は甚だ困難であり劇しい還元下で強熱してβ-Al2O3部分を分解せしめる如き方法によらねば除去し難い事を知つた.
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© The Ceramic Society of Japan
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