窯業協會誌
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融剤法によるYAG単結晶の育成
進藤 勇小松 啓
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1977 年 85 巻 984 号 p. 380-384

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抄録

PbO-PbF2-B2O3を融剤として用いた徐冷法によるYAG単結晶の合成について検討した. (1) 最初にPbO, PbF2, 及びPbO-PbF2-B2O3混合融剤に対するYAGの溶解度曲線を800-1300℃の範囲で, 白金カプセルを使用する重量減少法により求めた. 溶解度差が最大なのは, PbO-PbF2-B2O3混合融剤の場合であるが, 収率の点では, PbO融剤が最も有利であることが判明した. (2) そこで, PbO-PbF2-B2O3混合融剤を用いて, YAGの育成実験を行った. その際, 白金坩堝上下に, 下部が低くなるよう, 0-15℃/cmの温度差をつけ, 1.3°, 2.6°, 5.2°および10.4℃/hの各徐冷速度で育成実験を試みた. その結果, 良質単結晶の合成条件としては, 坩堝上下の温度差: 6℃/cm以上, 徐冷速度: 2.6℃/h以下, 徐冷開始温度1300℃以上が必要であることが判った. (3) 生成結晶のファセットは {110} が大部分であり, {211} は稀で, {211} のみで囲まれた結晶は全く生成しなかった. この傾向は, 高温での初期成長域でも同様であり, {110} が優位であった. (4) この系の融剤を用いて, YAG結晶を合成する場合, 約950℃以下では, 生成結晶は再溶解するという報告があるが, 溶解度の測定結果, 850℃までの合成実験のいずれによっても, このような再溶解現象は, 見出されなかった.

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© The Ceramic Society of Japan
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