窯業協會誌
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釉応力測定による半磁器の経年貫入抵抗性の評価方法について
陶磁器素地と釉薬との適合性に関する研究, 第5報
稲田 博
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1978 年 86 巻 992 号 p. 170-174

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抄録

種々の吸水率をもつ同一配合の半磁器食器をオートクレープ中10kg/cm2 (178℃) の水蒸気下で処理し, 処理時間による釉応力の変化を測定した. 釉応力を処理時間の対数に対してプロットすると直線的な減少傾向を示した. 素地の吸水率が小さくなると初期圧縮応力は増すが, 処理時間による釉圧縮応力減少の傾斜は素地の吸水率が変わっても同じであった. すなわち釉応力が0となる処理時間は初期圧縮応力の大小のみに依存することがわかった. 釉厚さが2倍の時は吸水率が小さくなると, 釉応力減少の傾斜が小さくなった.
このように処理時間による釉応力の変化は直線的となるため, 初期圧縮応力と, オートクレーブ1回処理, 例えば3時間処理後の釉応力の値から, 釉応力が0となる処理時間を求めることができる. すなわち迅速な経年貫入抵抗性測定法となり得る.
高火度磁器, ボーンチャイナ, ビトリアスチャイナではオートクレーブ処理により釉応力は全く変化せず, 経年貫入に関し完全に安全であることが改めて確認された.
本方法によれば, 単に経年貫入抵抗性を迅速に測定できるだけでなく, 初期圧縮応力と釉圧縮応力低下傾向の大小の二つを知ることができるので, 半磁器の経年貫入抵抗性を改善, 管理する上で便利であろう.

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© The Ceramic Society of Japan
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