ガラス状PbO-GeO
2系及びPbO-B
2O
3系のラマンスペクトルを測定し, これを解析した. ガラス状純GeO
2において, バンドは300-600 (ピーク位置は410), 760, 860及び970cm
-1に観測された. 410, 760及び860cm
-1のバンドをそれぞれ, 4面体構造で
Td対称をもつGeO
4単位のν
4, ν
1及びν
3モードに帰属した. PbO-GeO
2系においては, 新しいバンドが750-850cm
-1に現われ, このバンドは偏光分析により2個のバンドに分けられる. この新しいバンドの一つ, 高エネルギー側のバンドは, 添加PbO量の増加に伴い低波数側ヘシフトする. この波数はPbO・GeO
2組成の近傍ではほぼ一定の値を示す. 更に低エネルギー側のバンドの同様なシフトも観測された. これは正方晶GeO
2 (ルチル型) のような6配位Ge原子の生成に関係するものと思われる. ラマンスペクトルにおけるこのようなバンドのシフトの傾向は, 既報の赤外線吸収スペクトルのバンドのシフトと同様である.
ガラス状B
2O
3において, バンドは450, 650, 806, 1260及び1470cm
-1に観測された. 650, 806, 1260及び1470cm
-1のバンドを, それぞれ平面三角形構造で
D3h対称をもつBO
3単位のν
4', ν
1', ν
3'及びν
3'振動モードに帰属した. PbO-B
2O
3系においては, 添加PbO量の増加に伴い1260及び1470cm
-1のバンドは一つのブロードなバンドとなり, 低波数側ヘシフトする. すなわちPbO 30mol%では1350cm
-1に, PbO 70mol%では1245cm
-1となる. これはPb
2+イオン及びBO
3群間の相互作用効果を示唆していると考えられる. また1000-1150cm
-1に新しいバンドが現われた. バンドの強度, はPbO濃度約50mol%までは増加し, それ以上では減少する. この事実はこの系に存在するBO
4単位の数と関連づけて考えられる.
上述の帰属に基づいてGeO
4及びBO
3構造単位の力の定数を
GFマトリックス法で算出した. GeO
4の
fr,
fφ及び
frφの値はそれぞれ5.45, 0.55及び0.13 (mdyn/Å) であり, BO
3についてはそれぞれ6.13, 0.80及び0.76 (mdym/Å) であった.
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