窯業協會誌
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ESRにより決定した酸化物ガラス中のPb2+の配位と2成分系鉛ガラスの性質
細野 秀雄川副 博司金澤 孝文
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1982 年 90 巻 1045 号 p. 544-551

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抄録

77Kにて鉛を含有する種々の酸化物ガラスにγ線を照射し, 生成した常磁性Pb3+のESRスペクトルを測定した. 核スピン1/2の207Pb核による超微細構造の解析から求めた不対電子の占有分子軌道に寄与するPbの6s原子軌道成分の大きさ (s性) が, 前駆体のPb2+の配位により大きく異なることを見いだした. すなわち, 配位I (ほぼ球対称の配位子場をもつ) から生成したPb3+のs性は, 配位II (三角錐または四角錐状の配位子場をもち, その頂点の方向に, 非共有電子対の占有軌道が突き出している) からのそれよりもかなり大きい.
この結果を利用して, 多種類の酸化物ガラス中のPb2+の配位の決定を試み次の結果を得た.
(1) リン酸塩及び低アルカリ・ホウ酸塩ガラス中では配位Iが支配的である.
(2) ケイ酸塩及び高アルカリ・ホウ酸塩ガラス中では配位IIが主体である. この結果は, g-テンソルの詳細な解析からも支持された.
次に2成分系鉛ガラスの性質とPb2+の配位との関係を検討した. ガラス中のPbOの部分モル屈折とs性の関係を見いだし, 配位IIのPb2+は, Iのそれよりも電子分極率がかなり大きいことを結論した.

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© The Ceramic Society of Japan
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