抄録
光吸収スペクトルを測定することによって, ゾルゲル法で作製した遷移元素酸化物-シリカ系コーティング膜中の遷移元素の原子価並びに配位状態を調べ, Schultzによって火炎加水分解法を用いて高温で作られたシリカガラス中の遷移元素イオンの挙動と比較した. 得られた結果を以下に示す.
(1) 均質なコーティング膜が得られる遷移元素酸化物の上限の濃度は, Cr2O3で10mol%, Mn2O3で20mol%, Fe2O3で45mol%, CoOで45mol%, NiOで55mol%, CuOで45mol%であり, この濃度における厚さ0.2-0.5μmのコーティング膜の555nm (人の視感度が最大となる波長) の透過率は, Crで81%, Mnで68%, Feで63%, Coでほぼ0%, Niで59%, Cuで95%であった.
(2) 遷移元素イオンのコーティング膜中での原子価及び配位状態のほとんどは, 高温で作られたSiO2ガラス中での原子価及び配位状態と同じであることが分った. しかし一つの遷移元素についてある原子価あるいは配位状態の占める割合 (濃度) は, 高温で作られたものと同一ではなかった. コーティング膜中でクロムは6配位のCr3+, マンガンは6配位のMn3+, 鉄は6配位のFe3+, コバルトは4配位のCo2+, ニッケルは6配位のNi2+, 銅は6配位のCu2+として存在することが分った.