窯業協會誌
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凍結乾燥法により得られたマグネシウム・アルミニウム水和複合硫酸塩の加熱分解過程
中川 善兵衛浜野 健也阪口 美喜夫神崎 修三
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1983 年 91 巻 1054 号 p. 297-303

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抄録

凍結乾燥により得られたマグネシウム・アルミニウム硫酸塩乾燥物 [MgAl2(SO4)4・8-9H2O] とそれを吸湿させて得たピッケリンガイト [MgAl2(SO4)4・22H2O] の加熱分解過程を調べ, 両者を比較検討した.
両試料からはいずれも脱水に伴い無水の硫酸マグネシウムと硫酸アルミニウムが結晶化する. 更に加熱すると硫酸アルミニウムが分解して非晶質を経てγ-アルミナに変化し, γ-アルミナは硫酸マグネシウムの分解時にそれと反応してスピネルを生成する. 結晶水の少ない凍結乾燥物ではこの反応が1000℃でほとんど終了するのに対し, ピッケリンガイトから出発した場合には少量の未反応のマグネシアがペリクレースとして更に高温まで残存した. この相違はピッケリンガイトが脱水中に融解し, 生成してくる無水硫酸塩の結晶子が大きくなることや. アルミニウム塩とマグネシウム塩が偏析するためと考えられ, 無水硫酸塩の分解温度が高温側に移行し, 生成するマグネシアの粒子が大きくなってスピネル化の反応が不完全となるためと推定された. またピッケリンガイトから生成するスピネルは, 凍結乾燥物から生成するものよりも結晶度が高くなる傾向が認められた.

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© The Ceramic Society of Japan
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