窯業協會誌
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ラマン分光法によるジルコニア溶射被膜の構造研究
岩本 信也梅咲 則正遠藤 茂樹
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1985 年 93 巻 1078 号 p. 281-288

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抄録

プラズマ溶射前後の3種類のジルコニア・セラミックス (ZrO2-8wt% Y2O3, ZrO2-20wt% Y2O3, ZrO2-2.77wt% MgO) がX線回折により調べられた. ステップ走査によって得られた {400} と {111} 面の積分強度から, これらジルコニア原料粉末並びにプラズマ溶射後の被膜中における単斜晶, 正方晶, 立方晶, の結晶形が定量された. その結果, プラズマ溶射により, 3種類のジルコニア被膜が安定化されることが判明した.
プラズマ溶射前後の3種類のジルコニア・セラミックスについてのラマンスペクトルが測定された. 得られた結果は,ジルコニア焼結体に対する他のラマン測定結果と良い一致を示した. ラマンスペクトルは, 単斜晶と正方晶ジルコニアの結晶形に対して極めて敏感であるために, ビッカース圧痕, 被膜の破壊あるいはレーザー光による熱処理によって発生する正方晶/単斜晶変態 (応力誘起変態) の解析に応用された. 得られた結果は, ラマン分光法がジルコニア被膜中で発生するこの相変態を研究することに対して極めて有効な手段であることを示した. 更に, ラマン・マイクロプローブがZrO2-8wt% Y2O3溶射被膜中のビッカース圧痕により発生するクラック部付近の相変態領域の解析に応用され, 変態領域がクラックから約12μmにまで及ぶことを明らかにした.

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© The Ceramic Society of Japan
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