溶融アルミニウム融剤を用いて, EuB
6 (立方晶系), GdB
4 (正方晶系) 及びTbB
4 (正方晶系) の各単結晶をアルゴンガス雰囲気中で合成した. 得られた単結晶について組成分析, 格子定数, 密度及びヌープ微小硬度を測定し, 更に, 空気中での酸化反応を調べ, その速度論的な検討を行った. 得られた結果は次のように要約できる.
EuB
6の立方体状, GdB
4の多面体状及びTbB
4の多面体状の各単結晶を得るための最適条件は, 原料の配合原子比が, EuB
6ではB/Eu=5.0, Al/Eu=80.4-107.3, GdB
4ではB/Gd=3.0-3.5, Al/Gd=80.2-160.4, TbB
4ではB/Tb=3.0-4.0, Al/Tb=87.5-145.9である. どの場合においても加熱温度は1500℃で, 保持時間は10時間である.
EuB
6単結晶は {100} 面で形成された立方体状結晶のほかに, {100} 面が良く発達した針状及び板状の結晶として得られた. GdB
4とTbB
4の単結晶は多面体状結晶として得られた.
単結晶の組成分析, 格子定数及び密度 (
dm) の値は次のとおりであった.
EuB
6: EuB
5.83,
a=4.1842±0.0009 (Å)
dm=4.83±0.04g/cm
3 GdB
4: GdB
3.86,
a=7.146±0.001 (Å),
c=4.046±0.001 (Å),
dm=6.40±0.03g/cm
3 TbB
4: TbB
3.99,
a=7.119±0.002 (Å),
c=4.027±0.002 (Å),
dm=6.54±0.04g/cm
3ヌープ微小硬度は, EuB
6では {100} 面について, GdB
4とTbB
4では {001} 面について測定し, 次の値を得た.
EuB
6: {100} 面上 〈100〉 方向, 2320-2470kg/mm
2 {100} 面上 〈110〉 方向, 2200-2360kg/mm
2 GdB
4: {001} 面上 〈100〉 方向, 1760-1880kg/mm
2 {001} 面上 〈110〉 方向, 1370-1540kg/mm
2 TbB
4: {001} 面上 〈100〉 方向, 1820-1960kg/mm
2 {001} 面上 〈110〉 方向, 1390-1520kg/mm
2EuB
6の酸化反応は640℃付近より始まり, 酸化生成物としてEu(BO
2)
3 (単斜晶系) を与えた. GdB
4とTbB
4の酸化反応は730℃-750℃より起こり, GdB
4の酸化生成物はGdBO
3 (六方晶系), TbB
4の酸化生成物はTbBO
3 (六方晶系) であった. なお, いずれの場合にも, 非晶質のB
2O
3が同時に生成するものと考えられる. これらの酸化反応は (d
w)
n=
ktに従い, これより求めた酸化の見掛けの活性化エネルギーは, EuB
6では59.8±4.0kcal/mol, GdB
4では144.4±4.2kcal/mol, TbB
4では91.8±6.1kcal/molであった.
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