窯業協會誌
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準安定固溶体の固溶成分の離溶析出による均質な多相セラミックスの合成
I. 準安定 (Sn, Nb)O2固溶体粉末の調製
高橋 順一高津 学太田 敏孝山井 巌
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1985 年 93 巻 1081 号 p. 541-547

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抄録

Sn4+とNb5+を含む混合塩化物溶液の加水分解により共沈ゲルを調製した. 得られた共沈ゲルについて, 沈殿の形態や加熱脱水に伴う相及び構造変化を調べた. 粉末X線回折では, 共沈ゲルの回折図形は水和SnO2ゲルと同一であり, 更に原子比がNb/Sn<0.5の共沈ゲルに対しては1073Kで6h熱処理した場合でもSnO2の回折線のみであった. このX線回折の結果及び各沈殿物 (水和SnO2ゲルと水和Nb2O5ゲル) の化学的, 物理的性質の類似性からNb5+はSnO2構造に近い共沈ゲルの格子に取り込まれると考えられる. 固溶したNb5+は1次粒子間の構造水の脱水縮合による結晶化に影響を与える. 1173Kで6h熱処理した共沈ゲルの回折線の裾野におけるブロードニングに関する詳細な検討から, 高いNb5+固溶量の脱水物では, それぞれNb5+量の多い相と少ない相に対応する結晶化の進んだ粒子と, 著しく結晶化が抑制されている粒子が混在していることが明らかとなった. 1223K以上の高温で加熱すると共沈物のX線回折線のなかにNb2O5が出現するが, これは準安定な (Sn, Nb)O2固溶体からNb5+が離溶析出してくることを示している. 準安定な固溶系からの第2成分の離溶現象を制御することにより, 均質な多相セラミックスを製造することが可能であると考えられる.

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© The Ceramic Society of Japan
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