窯業協會誌
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フラックス法によるエメラルドの結晶成長とCr3+のドープ条件
坂本 千秋藤井 知杉江 他曽宏花本 哲也
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1985 年 93 巻 1083 号 p. 732-738

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抄録

フラックス法によるエメラルド単結晶の作製において, 従来からの研究に対し次の諸点のような検討を加えた. すなわち, (1) フラックスとしては, Li2MoO4-MoO3の代わりにK2MoO4-MoO3を用いた. (2) フラックスの蒸発による結晶成長効果を求めた. (3) Cr3+のドープ状況を改善するために, 出発原料をあらかじめ低温仮焼した. (4) フラックスに対する出発原料の充てん方法を工夫した. 上記の事項について検討を行い, 次の結果が得られた.
(1) X2MoO4-MoO3において, X=Kの場合はX=Naに比べc軸方向で0.07mm, a軸方向で0.25mm, またX=Liよりもc軸方向で0.73mm, a軸方向で0.11mmだけ増大した.
(2) 徐冷速度8.33℃/h, 保持温度1000°-1140℃におけるフラックスの蒸発効果によりc軸方向の長さ1.98mm, a軸方向の長さ0.77mmに達する結晶が得られた.
(3) ドープ剤として従来のα-Cr2O3の代わりに, Al(OH)3-Cr(OH)3共沈物を出発原料とともにあらかじめ800℃, 10h仮焼して使用したところ, 緑色の着色濃度は向上した.
(4) フラックスを上部に, 出発原料を下部に充てんした結果, 生成物はるつぼ内に分散し, 保持温度1200℃でc軸方向の長さ2.45mm, a軸方向の長さ1.30mmに達する結晶が得られた.

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© The Ceramic Society of Japan
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