窯業協會誌
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93 巻, 1083 号
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  • アロフェンの場合
    岡田 清, 大津賀 望, 小坂 丈予
    1985 年 93 巻 1083 号 p. 671-678
    発行日: 1985/11/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    SiO2, Al2O3, H2Oを主成分とする粘土鉱物のアロフェンの焼成による生成相のキャラクタリゼーションを種々の方法で行った. 主な生成相はスピネル相, ムライト, クリストバライトであった. スピネル相は格子定数, 赤外吸収, 比重, アルカリ処理等によってγ-アルミナと同定された. したがってその組成は純アルミナに近く, シリカはほとんど固溶していない. 975°-1050℃焼成で生成するムライトは通常の3Al2O3・2SiO2組成よりアルミナ分に富む. 1075°-1500℃焼成で生成するムライトは、 処理温度が高くなるに従って柱状晶へと成長し, その組成は3Al2O3・2SiO2に近い. クリストバライトの格子定数は純粋なもののそれより明らかに大きく, Al2O3及びFe2O3の固溶の可能性を示唆する. 分析電子顕微鏡によるとクリストバライト上のどの測定点でもAl2O3は2%以上, Fe2O3は1%以上検出される. 焼成によりアロフェンは, いったんγ-アルミナと非晶質シリカに相分解し, その後更に高温で焼成すると反応してムライトを生じ, シリカはクリストバライトに結晶化する.
  • 小山田 了三, 角 和博
    1985 年 93 巻 1083 号 p. 679-685
    発行日: 1985/11/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    (100-y)(PbO・SiO2)・xK2O・(y-x)Na2O系ガラスのNi2+イオンの光吸収スペクトルを測定し, この結果からNi2+イオンとその周りに配位した酸素の配位子場強度及びRacahのBパラメーターを求め, ガラス中のNi2+イオンの配位状態を決定した. 更にNa2O, K2O及びNa2O・K2Oのアルカリ含有量を変化させて起こるこれらのパラメーターの変化からガラス構造を検討した.
    まず4配位のNi2+イオンの存在を示すν4ピークと6配位のNi2+イオンの存在を示すν3ピークの強度比 (ν43) は, Na2O, K2O及びNa2O・K2O中のK2Oの増加に伴い高い値を示し, アルカリの増加によって4配位が増加することが分った.
    また配位子場強度を示すν1ピークは, Na2O, K2O及びNa2O・K2O中のK2Oの増加に伴い, 低波数側ヘシフトした. 更にBパラメーターでは, K2O及びNa2O・K2O中のK2Oの増加に伴い, 低波数側ヘシフトした.
  • 水野 正雄, 山田 豊章
    1985 年 93 巻 1083 号 p. 686-691
    発行日: 1985/11/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    Ln2O3-Ga2O3系 (Ln=La, Pr, Nd, Sm, Eu, Gd, Dy, Ho, Er及びYb) 化合物の固相反応及び溶融後急冷による合成を行い, それら生成相の高温における挙動について検討した.
    この系に生成する化合物は, ガーネット型立方晶系構造の3Ln2O3・5Ga2O3 (Ln=Nd, Sm, Eu, Gd, Dy, Ho, Er, Yb), ペロブスカイト型斜方晶系構造のLnGaO3 (Ln=La, Pr, Nd), 単斜晶系構造の2Ln2O3・Ga2O3 (Ln=La, Pr, Nd, Sm, Eu, Gd) 及び斜方晶系構造の3Ln2O3・Ga2O3 (Ln=Sm, Eu, Gd, Dy, Ho, Er) の単一相が認められた.
    生成化合物は, LaGaO3を除いて, 再加熱による結晶構造の転移は認められず安定相である. LaGaO3は再加熱に伴い900℃付近において斜方晶系から菱面体晶系に可逆転移することを確認した.
    大部分の生成化合物は安定相で認められた. 化合物の凝固点は, LnGaO3についてはLnイオンのイオン半径が小さくなるに従って低下し, 3Ln2O3・5Ga2O3及び2Ln2O3・Ga2O3は上昇する傾向を示した. 一方, 3Ln2O3・Ga2O3及び2Gd2O3・Ga2O3は加熱に伴い分解溶融することを認めた.
    生成化合物の格子定数は, Lnイオンのイオン半径が小さくなるに従って順次収縮するのが, それぞれ観察された.
    生成化合物の屈折率は, 3Ln2O3・5Ga2O3n=2.01-2.04, LnGaO3nγ=2.05-2.06, nα=2.04-2.05, 2Ln2O3・Ga2O3nγ=1.95-2.01, nα=1.93-1.99及び3Ln2O3・Ga2O3nγ=2.01-2.05, nα=2.00-2.02の範囲である.
  • AE法による解明
    荒堀 忠久, 鈴木 隆夫, 藤沢 和夫
    1985 年 93 巻 1083 号 p. 692-699
    発行日: 1985/11/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    ケイ石耐火物の主成分であるシリカ (SiO2) には, 石英, トリジマイト, クリストバライトがあり, 各鉱物とも低温域にα-β転移を有しており, 使用上問題となっていた. したがって, ケイ石耐火物について, 熱サイクルによる性状変化の影響を調査することは重要である.
    本研究に使用した耐火物にはトリジマイト (転移温度117℃, 163℃) とクリストバライト (200°-275℃) を含有しており, 熱サイクルに伴う耐火物の機械的性質及び微構造変化をAE, 音速, 高温顕微鏡等を使用して調査した.
    この結果, 熱サイクル処理後の試験片では, AEで測定した破壊開始点及び音速は, 転移温度を含むような低温条件で熱サイクルを処理した試料ほど低く, 強度測定結果と対応することが判明した. また, チェッカー煉瓦では, 転移を含む条件で, 第1サイクルにクラックが発生し, その後徐々に進展する状況が, AE及び高温顕微鏡で確認できた. 転移を含まない条件でも, 低温域では強度, 超音波の低下が認められ, これはマイクロクラックの発生によるものと推定される.
  • 田中 博史, 矢沢 哲夫, 江口 清久
    1985 年 93 巻 1083 号 p. 700-707
    発行日: 1985/11/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    分相させたナトリウムホウケイ酸ガラスを酸溶出して得られる多孔質ガラスは, 通常ホウ酸相中のシリカ成分に由来するコロイド状シリカを含んでいる. コロイド状シリカの析出を防ぐ目的で, ホウケイ酸ガラスに三酸化モリブデンを加えたところ, ガラスの乳濁が促進された. キャスト時に乳濁し, 不透明になったガラスはX線的にアモルファスであったが, 発達した球状の分相構造を示し, 酸化モリブデンのガラスへの溶解度と関連した分相が生じているものと考えられた. この分相は高温で起こり, 冷却過程で急速に進行すると思われる. 熱処理するとこれとは別の分相構造が生じ, シリカ-ホウ酸-酸化ナトリウム3成分系本来の分相によるものと推論された. 熱処理によって “からみ合い” 構造が生じた分相ガラスを酸溶出することにより, 多孔質シリカ骨格を有する多孔質ガラスが得られた. この多孔質ガラスのシリカ骨格の細孔中に析出したコロイド状シリカは出発ガラスのシリカ含有量が増加するとともに増加し, それにつれて骨格の細孔容積は著しく減少した.
  • 趙 修建, 福永 二郎, 吉田 直次郎, 井原 将昌
    1985 年 93 巻 1083 号 p. 708-716
    発行日: 1985/11/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    CaO-Ga2O3-B2O3系のガラス化領域を決定し, その領域内のガラス構造をラマン分光法により研究した. ガラス化領域はCaO-Al2O3-B2O3系と比べてGa2O3/CaO比=2付近の組成まで広がっている. 高ホウ素含有ガラスのラマンスペクトルはボロクソール群, 一つあるいは二つのBO4 4面体を含む6員環ホウ酸塩群, ピロボレート群及びオルソボレート群が存在し, Ga3+が酸素と4配位していることを示した. B2O3をCaOで置換していくと, ホウ酸塩群はBO4 4面体を多く含むものに変化し, 更に非架橋酸素を含むホウ酸塩群に変化する. 低ホウ素含有ガラスではB2O3は主にオルソボレート群として存在するが, 4面体を含むホウ塩酸群も少量存在している. ほとんどのGa3+が酸素と4配位し, 相対的にGa2O3含有量の多いガラスではCaO・2Ga2O3結晶と類似した構造が存在する. この領域でGa2O3をCaOで置換していくと, オルソボレート群の量が増加し, 4面体を含むホウ酸塩群の量が減少し, ガレート網目構造が非架橋酸素を多く含むものに変化する. CaO-Ga2O3-B2O3系ガラス中ではAl2O3系に比べ, CaO-Ga2O3 2成分網目構造が広い領域で存在する.
  • 引地 康夫, 福尾 券一, 三輪 徹
    1985 年 93 巻 1083 号 p. 717-722
    発行日: 1985/11/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    クリストバル岩にアルミン酸ナトリウム, 水酸化ナトリウム及び水を所定量 (SiO2/Al2O3のモル比5-9, Na2O/SiO2のモル比1.5-5, クリストバル岩1gに対する水量30ml又は50ml) 混ぜて, プラスチックびんに入れて密栓し, 大気圧下20℃-40℃で2時間から360時間まで保持した. その結果, 結晶化度が高く, かつ単相のホージャサイト型ゼオライトを合成する最適の配合割合は, SiO2/Al2O3のモル比が5, Na2O/SiO2のモル比が5, クリストバル岩1gに対する水量30mlのときであり, 得られたホージャサイト型ゼオライトの相対的結晶化度 (MS13X結晶を基準にして求めた) は20℃のとき360時間で28%, 40℃のとき48時間で22%, 360時間で61%であった. クリストバル岩の代わりにシリカゲルを用いて, 同様の合成実験を行った結果, シリカゲルを用いてもクリストバル岩を用いても, 同じ合成条件で得られるホージャサイト型ゼオライトの相対的結晶化度には, ほとんど違いはみられなかった. 以上から, クリストバル岩はホージャサイト型ゼオライトの合成原料になりうるものと思われた.
  • 李 潔, 小笠原 敏文, 服部 信
    1985 年 93 巻 1083 号 p. 723-727
    発行日: 1985/11/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    硫化ヒ素とセレン化ヒ素の非晶質粉体につき, 水のほか数種の有機液体の接触角θを測定した. 表面自由エネルギー (表面張力) を, 分散力成分γDと極性成分γPに分け, 界面張力に幾何平均近似を適用して, 固体の表面張力を試算した. ただし, cosθと (γLD)1/2・γL-1は直線関係になること (γLは液体の表面張力), cosθ=1ではγPが無視できること, θ>0°のとき表面圧は無視できること, などを仮定した. As2S5とAs2Se3ではcosθ vs. (γLD)1/2・γL-1プロットはγSDだけを含む直線となり (γSは固体の表面張力), こう配から求めたγSDはそれぞれ34.4mJ・m-2と37.5mJ・m-2である. As2S3の場合は分散成分と極性成分γSPを含むこう配となり, γSDは25mJ・m-2である. γSPは1-8mJ・m-2の範囲となり, 分散力成分よりかなり小さいと推定される. この結果より, これらのカルコゲン化物は低表面エネルギーであると考えられる.
  • 山本 貴憲, 吉川 信一, 小泉 光恵
    1985 年 93 巻 1083 号 p. 728-731
    発行日: 1985/11/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    リチウム金属の表面を窒化することによりLi3N膜の作製を試みた. 生成反応過程の観察を行い, 生成反応に対する雰囲気の影響について調べた. 更に生成した膜のリチウム固体電池への利用について検討した. 膜厚を制御するための反応は室温で行い, 反応時間90分で約1mmの膜厚を得た. 膜の生成速度は, 反応に用いた窒素ガスの純度が高くなるに従って遅くなることが分った. TiS2を正極とした電流では1μA程度の電流を約1時間取り出した. しかし一般的に電池の内部抵抗が高く, また長時間にわたる放電はできなかった. 比較のために窒化リチウムの圧粉体及び焼結体についても導電度の測定を行い, 窒化リチウムの化学的及び電気化学的な安定性を検討した.
  • 坂本 千秋, 藤井 知, 杉江 他曽宏, 花本 哲也
    1985 年 93 巻 1083 号 p. 732-738
    発行日: 1985/11/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    フラックス法によるエメラルド単結晶の作製において, 従来からの研究に対し次の諸点のような検討を加えた. すなわち, (1) フラックスとしては, Li2MoO4-MoO3の代わりにK2MoO4-MoO3を用いた. (2) フラックスの蒸発による結晶成長効果を求めた. (3) Cr3+のドープ状況を改善するために, 出発原料をあらかじめ低温仮焼した. (4) フラックスに対する出発原料の充てん方法を工夫した. 上記の事項について検討を行い, 次の結果が得られた.
    (1) X2MoO4-MoO3において, X=Kの場合はX=Naに比べc軸方向で0.07mm, a軸方向で0.25mm, またX=Liよりもc軸方向で0.73mm, a軸方向で0.11mmだけ増大した.
    (2) 徐冷速度8.33℃/h, 保持温度1000°-1140℃におけるフラックスの蒸発効果によりc軸方向の長さ1.98mm, a軸方向の長さ0.77mmに達する結晶が得られた.
    (3) ドープ剤として従来のα-Cr2O3の代わりに, Al(OH)3-Cr(OH)3共沈物を出発原料とともにあらかじめ800℃, 10h仮焼して使用したところ, 緑色の着色濃度は向上した.
    (4) フラックスを上部に, 出発原料を下部に充てんした結果, 生成物はるつぼ内に分散し, 保持温度1200℃でc軸方向の長さ2.45mm, a軸方向の長さ1.30mmに達する結晶が得られた.
  • 堀部 利泰, 桑原 千三
    1985 年 93 巻 1083 号 p. 739-742
    発行日: 1985/11/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    仮基板を使用しない方法により, Al2O3, Al2O3-SiO2系, SiO2, ZrO2, MgAl2O4の独立薄膜を調製した. 前駆物質溶液に界面活性剤を加え, その液膜を白金線枠に張り, 乾燥後900℃又は1000℃に加熱して酸化物膜を得た. 生薄膜はMgAl2O4以外では程度に差はあるが波形断面を示した. 酸化物膜は, 厚さ1-4μmの間にあり, 透明又は少し乳白性を帯びていた.
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