Journal of Chemical Software
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研究論文
主成分分析法とニューラルネットワークを用いた河川の上流・中流・下流を示す水質パラメータの抽出- 東京多摩川の水質データを用いて -
神部 順子福田 朋子長嶋 雲兵青山 智夫
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2002 年 8 巻 1 号 p. 27-36

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抄録

河川の上流・中流・下流を示す水質パラメータを抽出するために、東京都環境局の「公共用水域および地下水の水質測定結果」(1997年から1999年)[4]に掲載の多摩川の17地点の水質に関するデータを主成分分析と新たにJavaを用いてニューラルネットワークシミュレータNecoに実装された3層パーセプトロン型ニューラルネットワークの入力パラメータの偏微分係数解析[2, 3]を用いて解析した。
  主成分分析の結果から、上流・中流・下流の分類は第一主成分と第二主成分の主成分得点を組み合わせることで可能であることがわかった。しかしながら、主成分分析では、12種類のパラメータのうち上流・中流・下流の分類に大きな寄与をするパラメータの抽出はできなかった。偏微分係数解析からはCl-, COND, NH4-Nなどの微係数が大きいことが判った。これらの変数は主に上流・中流と下流を分類するものである。また、これらに続く絶対値の大きさを持つT-P, NO3-N, PO4-Pは、中流と下流および上流を分ける変数となっており、上流を分類するパラメータは、pHとDOであることがわかった。
  水質汚染という観点からみると、多摩川では上流から中流域の水質の変化に比べて中流から下流域の水質変化の方が緩やかであることがわかった。このことにより多摩川の水質保全には、中流域での汚染原因を取り除くことが重要であることが示唆された。

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© 2002 化学ソフトウェア学会
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