2020 年 44 巻 p. 32-36
津守眞の『子ども学のはじまり』が出版されて、今年で40年になる。津守の研究史においては、彼が自らの研究の「転回」と呼ぶ時期を経てまとめた、新たな出発点となる著作である。自然科学的アプローチからは独立した専門性をもつものとして提示された津守の「子ども学」は、現在においても新しさをもっている。本論文では、彼の「子ども学」がどのような視野をもつ学であったのか、「転回期」の著作を中心に検討を行い、1)全人的なアプローチ、2)子ども時代へ の敬意、3)人間の原型を見出すこと、4)子どもたちと出会う私という4点を抽出した。こうした視野に基づき、子どもにかかわる人間的な探究のあり方について考察した。