脳神経外科ジャーナル
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卵巣過剰刺激症候群に合併した脳底動脈塞栓症の1例
福田 健志小笠原 邦昭太田原 康成紺野 広鈴木 豪小川 彰
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2003 年 12 巻 8 号 p. 575-579

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抄録
ヒト閉経期ゴナドトロピン-ヒト絨毛性ゴナドトロピン(human menopausarl gonadotropin-human chorionic gonadotropin ; hMG-hCG)療法により卵巣過剰刺激症候群を呈した37歳の女性が,突然の意識障害,脳幹部症状をきたした.脳血管撮影で左後大脳動脈起始部の閉塞性病変を認めた.血液検査では,赤血球の増加,軽度のヘマトクリット値の上昇,Dダイマー・FDPの上昇,AT IIIの低下,TATの高値と凝固能亢進を呈していた.発症様式,脳血管撮影,血液検査から脳底動脈の塞栓症と診断した.卵巣過剰刺激症候群においては,hMG投与による高エストロゲン血症が引き起こす凝固亢進状態と,hCG投与による黄体からの血管内皮増殖因子と,アンギオテンシンIIの過剰分泌による血管内脱水の2つの要因により,血栓化傾向をきたすものと考えられる.卵巣過剰刺激症候群が,脳血栓塞栓症の原因となることを銘記すべきである.
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© 2003 日本脳神経外科コングレス

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