抄録
電子顕微鏡的解析は,従来から脳腫瘍の診断や新しい腫瘍概念の確立に重要な役割を果たしてきた.免疫組織化学の導入以来,電顕検索の頻度は減少しているが依然として重要な研究手段である.神経細胞性腫瘍では,dense core granule, clear vesicle,シナプス,微小管を入れた神経突起の存在などが共通して認められる特異的所見である.上衣腫や脈絡叢腫瘍では,膠腫的特徴に加えて,微絨毛,線毛,接着装置,基底板などの上皮性構造が認められる.髄膜腫は多彩な腫瘍群であるが,指状嵌合を示す細胞突起とデスモゾームが発達していることが多い.電顕観察に当たっては,非腫瘍性成分を腫瘍と誤認しないような注意も必要である.