頭部外傷症例に求められる法医学的課題は,受傷時の模様を再現し,被害者の傷害の責任の所在を解明するための情報(資料)の提供,法的因果関係の解明にある.この情報とは,損傷の種類(名称)のみならず,成傷器具の種類(鈍器,鋭器など),外力の種類,成傷機転(打撲,転倒・転落),受傷時の身体状況(飲酒,薬物摂取,疾病),受傷後死亡までの状態(意識レベル,行為能力など),死亡例では死因の解明である.成傷機転では,同側挫傷が認められた場合は打撲が,対側挫傷の場合は転倒・転落が疑われる.成傷器具は,外表の損傷の種類から判断可能である.受傷時の飲酒の程度は,血液・尿ばかりでなく頭蓋内血腫からも分析可能である.
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