抄録
形態学的側面からみた奇形性(脳形成不全性)水頭症の診断は,正常な脳室の形態発生を正しく理解したうえではじめて可能となる.なかでも発生の初期段階における脳胞(brain vesicle)の分化と発達の理解は,中枢神経奇形の診断のみならず,複雑に進化した脳形態を理解するためにも,きわめて重要である.本稿では,まず正常な前脳の分化と発達を,従来の発生学的知見に基づいて概説する.また,前脳の分割異常で生ずる全前脳胞症の終脳形態を解析し,半球分割が生じないまま発達,成長した脳(全球脳; holospheric brain)の本体について考察する.さらに,正常な半球分割が完了した直後の脳(半球脳; hemispheric brain)として脳梁欠損症を取り上げ,これに伴う交通性半球間裂嚢胞(communicating interhemispheric cvst)の形態発生について検討を加える.