抄録
下垂体腺腫の枠組みについて著者らは,1)GH-PRL-TSH細胞グループ,ACTH細胞グループ,ゴナドトロピン細胞グループに大別され,2)各グループの枠を超えた複数のホルモンが1つの腺腫に共存する可能性はきわめて低く,3)各グループにはホルモン過剰症状を呈する腺腫とそれを欠く腺腫とがある,と考えている.2004年秋に刊行される予定の新WHO分類はKovacsらの病理組織学的分類を基盤にしており,分類項目はGH producing adenoma, PRL producing adenoma, TSH producing adenoma, ACTH producing adenoma, gonadotroph adenoma, null cell adenoma, unusual plurihormonal adenoma に分けられている.GH producing adenomaはdensely granulated somatotroph adenoma, sparsely granulated somatotroph adenoma, mixed somatotroph-lactotroph adenoma, mammosomatotrophadenoma, acidophil stem cell adenoma の5型が細分され,後3者はGHとPRLをともに産生するタイプである.ACTH producing adenomaの亜型としてsilent ACTH producing adenoma とCrooke's cell adenoma が示され,前者をさらに電顕的にsubtype 1とsubtype 2 の2つのタイプに区別している.Gonadotroph adenoma はほとんどが臨床的に非機能性の腺腫であるが,下垂体腺腫手術例の約30%を占め,最近では最も頻度が高いタイプである.ナルセル腺腫は下垂体ホルモンあるいは転写因子がすべて陰性の腺腫と定義された.ナルセル腺腫の亜型としてoncocytomaが含まれている.unusual plurihormonal adenoma の1つとしてsilent subtype 3 adenoma があり,臨床的にはプロラクチノーマに類似し,GH, PRL,TSHがしばしば陽性である.下垂体癌は頭蓋外ないし髄膜へ転移播種した腫瘍と定義され,生命予後はきわめて不良である.転移病巣では多数の核分裂像,細胞異型,壊死巣などが認められるが,初日原発巣ではこれらの悪性所見に乏しい.転移の可能性を推測しようとする試みの1つとして,核分裂像とP53蛋白陽性細胞の存在.Ki-67標識率3%以上を指標にした「異型腺腫」が記載されている.