脳神経外科ジャーナル
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聴神経腫瘍の手術とQOL : 経迷路法の利点とピットフォール(<特集>聴神経腫瘍の治療)
森田 明夫
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2007 年 16 巻 2 号 p. 96-104

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抄録
聴神経腫瘍に対する経迷路法の利点とピットフォールを生活の質指標(QOL)の術前後の推移を含めまとめる.症例と方法:2000年11月より2006年2月までに治療された23例を対象とした.4例は神経線維腫症II型,3例は再発例,20例ではcosmetic mastoidectomyを併用した経迷路法を用い,3例でテントを切開するcombined petrosal approachとした.SF-36v.2,EQ5Dを用いたQOL評価を,5例の術前・術後3カ月,12カ月に行った.結果:亜全摘出以上が21例,術中の新たな顔面神経の切断は1例,部分損傷は4例あり,HB grade3以上の麻痺が現時点で継続しているのは1例(5%)である.その他の合併症は,1例で髄液漏をきたし腰椎ドレナージを要したこと以外は認められなかった.QOLは健康成人対象と比較し,術前特に活力,痛み,健康感等の尺度で大きく低下していたが,術後3カ月,12カ月で順調に回復し,特に痛みの回復は早かった.経後頭蓋窩法と比較すると,回復の経過が早く,特に痛みの回復が早い.結語:経迷路法は,側頭骨手術であり,腫瘍の摘出においても手術に習熟を要する手術法である.しかし技術的に習熟することにより,患者の自覚的指標の回復が早く,聴神経腫瘍に対する低侵襲な治療選択となる.
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© 2007 日本脳神経外科コングレス

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