脳神経外科ジャーナル
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抗癌剤による化学療法が若年女性癌患者の妊孕性に及ぼす影響(<特集>妊娠分娩と脳神経外科疾患)
鈴木 直石塚 文平
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2009 年 18 巻 5 号 p. 361-366

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抄録

抗癌剤による卵巣機能不全は化学療法誘発性無月経と称されており,稀発月経や無月経また無排卵症を呈し,その発生頻度は患者の年齢や抗癌剤の種類,抗癌剤の投与量などに依存すると考えられている.若年女性癌患者における抗癌剤による化学療法後の卵巣機能維持は,妊孕性温存という観点のみならず,女性としてのQOL保持に欠かせないものとなる.悪性度の高い乏突起膠腫は,特にアルキル化剤を基準とした化学療法が有効であるとの臨床試験報告が相次いでおり,用いられる抗癌剤はCCNU,BCNU,ACNU,塩酸プロカルバジン,ビンクリスチン,シスプラチン,エトポシド,メルファランそして5-FUなどとなっている.これら抗癌剤の中で,特にアルキル化剤は化学療法誘発性無月経を誘発する最もリスクの高い抗癌剤であると考えられている.成人女性癌患者に対しては,受精卵や未受精卵の凍結保存などを行うことによって,治療後の女性としてのQOL向上や妊孕性温存の手段を講じることが可能となってきた.しかし,初経前後の女性癌患者に対しては,これらの手段は適応不可能であり,GnRHアナログによる抗癌剤の卵巣毒性保護や卵巣組織を治療前に体外で凍結保存することのみが唯一の手段となる.癌に対する診断法や治療法の進歩に伴って,若年女性癌患者が妊孕性を温存した治療を選択する機会が増加しつつある.しかし,妊孕性温存にこだわることによって患者の生命予後を損なうことがあってはならず,若年女性癌患者における妊孕性温存の適応に関しては,十分な話し合いの下,慎重に決定すべきである.

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© 2009 日本脳神経外科コングレス
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