脳神経外科ジャーナル
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非機能性巨大下垂体腺腫の複合治療(<特集>間脳下垂体腫瘍の治療)
山田 正三福原 紀章大山 健一
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2010 年 19 巻 9 号 p. 658-665

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抄録

巨大下垂体腺腫は通常のmacroadenomaに比べ,術後に周囲の脳組織の障害を呈しやすく,現在でも手術死亡率は5〜18%と高く,きわめて治療の困難な疾患である.非機能性下垂体腺腫の治療の第一選択肢は外科治療である.手術は経蝶形骨洞的アプローチ(TSS)が最初に考慮される.一方,トルコ鞍の拡大が軽度で腫瘍の大半が鞍上部に存在する巨大腫瘍では開頭術(TC)が選択される.しかし,巨大腺腫では,多くはTSSやTC単独では十分な腫瘍の切除が困難で,注意深く手術操作を行っても残存腫瘍内や周囲に術後出血や梗塞を生じ致命的な視機能障害や重篤な高次機能障害を伴うことがあり,術後死亡の最大の原因となっている.われわれは,このような重篤な神経症候の合併を避けるためには,可能なかぎり一期的に腫瘍の切除を行うことが重要であると考えてきた.そのための工夫として,比較的小さな巨大腺腫では拡大経蝶形骨洞法を,それ以外では経蝶形骨洞法,開頭術同時併用術(combined supra-infrasellar approach)を行い,満足のいく成績が得られている.ただし,いずれの方法でも術後の髄液漏は必発で,この予防には硬膜欠損部への筋膜縫合が有用であった.また,いずれの手術を選択した場合でも再手術が困難な部位での腫瘍残存や,再発を繰り返している腫瘍で残存を認める場合などには術後照射を十分に考慮すべきであると考えている.

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© 2010 日本脳神経外科コングレス
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