脳神経外科ジャーナル
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脳動静脈奇形に対する集学的治療における定位放射線治療の役割(<特集>脳脊髄動静脈奇形の診断・治療の進歩)
辛 正廣甲賀 智之斉藤 延人
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2011 年 20 巻 1 号 p. 37-41

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抄録

脳動静脈奇形に対する治療法の最大の目的は出血の阻止にある.現在,摘出術,血管内治療,定位放射線治療が選択肢としてあり,その中でも定位放射線治療の役割について考察をし,最近の知見について述べる.当院で定位放射線治療を行った脳動静脈奇形714例を基に検討を行ったところ,閉塞に有意に関与する因子は,nidusの大きさ,照射線量,出血の既往であった.顕微鏡下摘出術では出血源の速やかな除去が可能だが,eloquent areaや脳深部では侵襲性が危惧される.血管内塞栓術は摘出術よりは低侵襲であるが,revascularizationがあり,単独では根治性が低い.しかし,摘出術や血管内治療後にはnidusの著しい縮小が見込め,これらでの治療が躊躇された部分への補助療法として定位放射線治療は最適であるが,治療後数〜十数年が経過した後も合併症を起こす危険性がある.以上より,今後,治療が困難な脳動静脈奇形では,定位放射線治療の後に摘出術を行うことで,顕微鏡手術に伴う"immediate and single phase risks"を軽減し,定位放射線治療後の慢性期合併症に伴う"long-lasting unclear risks"を排除できる,安全で効果的な治療戦略の構築が可能となりえる.

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© 2011 日本脳神経外科コングレス
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