脳神経外科ジャーナル
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顕微鏡手術における神経内視鏡の役割 : 神経内視鏡と顕微鏡の使い分けの現状分析を中心に(<特集>神経内視鏡の進歩)
小野 成紀石田 穣治安原 隆雄黒住 和彦市川 智継伊達 勲
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2011 年 20 巻 10 号 p. 716-724

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抄録

脳神経外科手術においては,1970年代より長らく手術顕微鏡による繊細で精密な手術がその主流を占めてきた.一方で,近年,神経内視鏡は従来の顕微鏡手術におけるアシストとしての使用はもとより,種々の頭蓋底手術,経蝶形骨洞手術,脳室系操作などにおいて顕微鏡手術と同様,重要な役割を担いはじめている.しかし,現時点では顕微鏡と内視鏡が双方使用される場面は限られていたり,施設によってその使われ方にばらつきがあるのも事実である.そこで今回われわれは,当科における神経内視鏡の適応疾患,使用の程度,使用方法などについて検討し,脳神経外科手術における顕微鏡と内視鏡の使い分けの現状分析と今後の展望について検討した.当科では約7年前にEndoArmを導入した結果,顕微鏡と内視鏡双方の使用時により安全で手軽に内視鏡を使用できるようになったことで,頭蓋底手術,経蝶形骨洞手術において内視鏡の併用手術は年々増加していた.また,昨年から経鼻的経蝶形骨洞手術に関しては神経内視鏡単独でのアプローチを行っており,内視鏡の比重が顕微鏡に取って代わった.ただし,鼻腔内操作などのトルコ鞍底部までのアプローチや止血操作に関しては,顕微鏡による立体的かつ高解像度の詳細な観察や,止血器具などの挿入のしやすさなどの点で依然顕微鏡の重要性も再認識させられる症例も存在した.頭蓋底では特に,前頭蓋底など,内視鏡がさまざまな角度から挿入可能な広い術野での使用が有用であり,顕微鏡の死角となるような頭蓋底骨浸潤をきたした腫瘍の摘出や,頭蓋底深部の髄液漏の確認,硬膜縫合などにも内視鏡は有用であった.神経内視鏡が大きく進化しつつある中で,大きな腫瘍の摘出や,器具の届かない場所,止血困難な症例では顕微鏡は依然主要な手術ツールである.顕微鏡,神経内視鏡ともに日々進化しており,顕微鏡との関係は刻々と変化していくものと思われるが,今後はそれぞれの欠点を補完するような顕微鏡と内視鏡の相互的進化が望まれる.

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© 2011 日本脳神経外科コングレス
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