抄録
Anterior transpetrosal approachは, 小脳橋角部や脳幹腹側部とともにMeckel腔の処置を同時に行えるため, 三叉神経鞘腫やテント髄膜腫がよい適応となる. また, 脳底動脈瘤や脳幹病変にも応用される. 本アプローチの欠点は術野が狭いこと, 側頭葉の牽引を要すること, 操作範囲が限られており, 下位脳神経群レベルの操作には適さないことである. 注意するべき合併症は, 側頭葉の牽引に伴う側頭葉症状で, 腰椎ドレナージや脳ベラのコントロールにより回避する工夫が必要である. 決してやさしいアプローチではなく, 十分な側頭骨解剖の理解と合併症回避の知識をもったうえで実際の臨床に用いることが重要である.