2012 年 21 巻 9 号 p. 731-735
Amyotrophic lateral sclerosis (ALS) の初期症状は多彩であり, その初期診断は困難であることが指摘されている.
今回われわれは, 腰部脊柱管狭窄症と診断し手術加療を行ったが, 病状が進行し最終的にALSと診断された症例を経験した.
症例は68歳男性. 腰痛を伴う歩行障害を主訴に来院. 画像上L4/5の椎間板ヘルニア, および脊柱管狭窄症を認めたため椎弓切除術を施行したが, 症状の改善を認めず, 術後から下肢の筋力低下, 筋萎縮, および呼吸障害が出現し急速に進行した. 最終診断はALSであり, 術後4カ月の経過で死亡された.
今回, 本症例の経過を報告するとともに, 腰痛, 下肢症状を初発症状とするALSについての文献的考察, および手術, 麻酔操作がALSの自然経過に及ぼす影響につき考察を加えた.